マー君はとても悪い男の子です。
 友達の悪口を言ったり
 小さな子をいじめたり
 犬の顔に落書きしたり
 猫のヒゲを切ったり
 ぬいぐるみをちぎったり
 お人形を壊したり
 本当に悪いことばかりします。

マー君には妹が一人います。
花ちゃんといいます。

花ちゃんはいつもマー君にいじめられて泣いています。
お母さんがしかってもまったく言うことをききません。
それどころかもっと花ちゃんをいじめるのです。

お父さんに叱られても
そんなことしていないといつも嘘をつきます。
叱られても平気でした。

僕は何でもできるんだ!僕がこの家で一番偉いんだ!
マー君はそう思っていました。

ある朝、マー君が起きたときにマー君はいつもと違うことに気づきました。
何か変なのです。

おかしいな。と思ってマー君は歯を磨きに洗面所にいきました。

そこでマー君はビックリしました。
鏡には灰色をしたツルツルの顔の男の子が映っていました。

マー君はとても怖くなってお母さんのところに行きました。
「お母さん、僕の顔がなくなっちゃったよ!」

ところがお母さんは知らんぷりです。
いくら呼んでもゆすってもお母さんはマー君のことに気づきませんでした。

きのう、妹のお人形を壊したにしたことでお母さんはとても怒っているのだと思いました。

マー君はお父さんのところに行きました。
「お父さん、僕の顔がなくなっちゃったよ!」

でも、お父さんはマー君などいないように本を読んでいるのでした。
ゆすってもゆすってもまったく相手にしてくれません。

怖くなって花ちゃんのところに行きました。
「お父さんとお母さんがおかしいんだよ!」

やっぱり花ちゃんも同じようにまったく気づいてくれませんでした。
マー君は花ちゃんにまで相手にしてもらえなくてとても腹が立ってきました。
「返事しないならいじめるよ!」
マー君はいつものように花ちゃんをおどかしたり悪口を言っていじめました。

不思議なことにいくらおどかしてもいじめても花ちゃんはは何も言いません。

マー君は本当に怖くなってしまいました。
怖くて怖くて泣いてしまいました。

もう、目も鼻も口も耳もないのに目のあったところから涙が溢れてきて口のあったところから声を出して泣いています。

しばらく泣いて疲れてきたころ、どこからか笑い声がすることに気づきました。
気味が悪かったけれど、マー君は声のするほうをじっと見ました。
するとそこには昨日壊したにしたお人形さんの首が転がっていて笑っているではありませんか。

クルリンと巻いた金色の髪の毛をした可愛らしいお人形さんが口元をゆがめてこういいました。
「あらあら誰かと思ったら、いたずら小僧さん。今度は自分の顔を壊したのね。いい気味ね」
とても冷たい声でお人形さんは笑っていました。

すると他のところからはとても怖い声が聞こえてきました。
声のするほうには壊れたぬいぐるみのライオンが真っ赤な口をあけて牙を光らせていました。
「このいたずら小僧め!喰ってやる。喰い殺してやる」
あんなに小さなライオンがいまは部屋いっぱいの大きさになってマー君を見下ろしています。
首だけのライオンはマー君を食べようと襲いかかってきました。

マー君は必死で逃げました。
どこをどう走ったのかわかりません。
家から飛び出し道を走って町を走り抜けてどんどんどんどん走っていきました。
それでもライオンは追いかけてきます。

電柱にぶつかり壁に身体をぶつけ車にあたりながらもライオンは追いかけてきます。

マー君は怖くて怖くて無我夢中で走り続けました。
そしてようやくライオンの声が聞こえなくなると、真っ暗な森の中でただ一人ぼっちでたっていることに気づきました。

どこを見ても怖い形をした木が並んでいるだけ。
空を見ても真っ暗、星一つ見えません。

灰色をしたマー君はまるでそこにいないようにすら見えました。
どこにきてしまったのでしょう。
とても寒く、とても暗く、マー君はまた泣き出してしまいました。
「お母さん!」
「お父さん!」
「花ちゃん!」
マー君は寂しくてしかたがなくて声を出して呼び続けました。
そしていつの間にか疲れて眠ってしまいました。

真っ暗な暗いくらい怖い森の中
どれぐらい眠ったでしょう。でもまだ真っ暗です。
何も変わりません。

時折気持ち悪い鳴き声が聞こえてきます。
「お〜らお〜ら。どこかにうまそうな子供はおらんか」
「嘘つき、意地悪、いたずら者」
「悪い栄養をいっぱい溜めたおいしい子供はおらんか」

鳴き声の中にとても気持ち悪い声が聞こえてきます。
マー君はとても怖くて耳のあったところを押さえて震えていました。
ところがどんなに耳を押さえても声はどんどんと近づいてきます。

「お〜らお〜ら。悪い子、うまい子どこにおる?」
「いたずら者のうまそうな匂いがしているぞ」

声はどんどん近づいてきます。
逃げよう!
マー君は勇気を出して走ろうとしました。ところが足を何かにつかまれています。

見ると壊されたお人形の手首がしっかりとマー君の足を握っているのです。
うわぁ!
マー君は震えました。
怖くて怖くて震えました。

必死で走ろうとしました。
だけど、マー君は逃げることができませんでした。
そうこうするうちに声がまた近づいてくるのです。
「悪い子どこだ?」
「意地悪、いたずらする子はどこにおる?」
「お〜らお〜ら」
もう目の前で声が聞こえています。

とても怖くて怖くてマー君はお漏らしをしてしまいました。
すると声がもっと近づいてきました。
「この匂いはあの子の匂い」
「顔を食べてやったあの子の匂い」
「どこにおる。もっと食べさせておくれ」
「お〜らお〜らどこにおる」

マー君の顔はこの得体の知れないものに食べられたようです。

そして目の前に現れたのはクマのぬいぐるみの顔、ライオンの身体ウサギの耳、猿のしっぽと16本の足を持つ気持ちの悪い化け物だったのです。

マー君は見覚えがありました。
どれもマー君の壊したぬいぐるみ達です。
そしてちょうどお腹の辺りにはマー君の目と鼻と口と耳がついています。
お腹についたマー君の顔は怖くて恐怖におびえています。

そのお腹についたマー君の顔がこういっているのです。
「み〜つけた」
「お〜らお〜ら」
「うまそうな悪いこの匂いがするよ」
「ほら食べてやろう」
「残さず喰ってやろう」

マー君は震えて動けません。でも逃げようと必死にもがきました。
でもお人形の手はマー君を離してくれませんでした。

「おいらを壊した子を食ってしまえ」
「わたしの耳をちぎった子を壊してしまえ」
「痛かった」
「苦しかった」
「同じ目にあわせてしまえ」
「壊したにしてしまえ」
「辛いよ。苦しいよ」
「同じ思いをさせてやれ」

怪物のお腹についたマー君の口は呪いの言葉をはいています。

そして怪物はマー君に近づくとマー君を踏みつけました。

踏みつけられたマー君はとても苦しくて息が出来ません。
「助けて!やめて!」
マー君は助けを請いました。

だけど怪物はまったく言うことをきいてくれません。
そのうちマー君は気を失ってしまいました。

マー君はぬいぐるみ達を壊しているときの夢をみました。
ぬいぐるみ達はマー君に一生懸命お願いしています。
「耳を引っ張らないで!ちぎらないで」
「腕が痛いよ」
「苦しいよ!やめてよ!助けてよ!」
「やめてしっぽがちぎれてしまう」
「嫌だ!助けて!助けてよ!!怖いよ!!」
必死でぬいぐるみ達は助けを求めていました。
それなのにマー君にはそれが聞こえませんでした。
いえ、聞こえていても同じことをしていたでしょうね。

そしていま、マー君は手と足を引っ張られてちぎられようとしています。
マー君は心の底から叫びました。
「ごめんなさい」
「もう意地悪しないから許してください」
マー君は一生懸命許しを請いました。

怪物のお腹のマー君の顔が言いました。
「僕たちもそういったよ」
「だけど壊されたんだ」
「そうだそうだ!こいつも壊してしまえ!」
「食べてしまえ!」
いろいろな声でマー君の顔が言いました。

「本当にごめんなさい」
「もうしません。許して」
マー君は言いました。何度も何度も言いました。

すると「もう反省しているみたいだから許してあげようよ」とウサギさんがいいました。
「ダメだダメだこいつは花ちゃんをいじめてた。だからこいつなんていなくなればいいんだ」
とライオンさん。
「そうだそうだ!口ばっかりの嘘つきだぞ。謝ってるのも絶対嘘だ!」とお猿さん。
一つの口がそれぞれいろいろな意見を言い始めました。

マー君は花ちゃんがとても嫌いでした。
「お母さん、妹か弟が産まれるんだよね。いつ産まれるの?」
「僕、楽しみにしてる」
「きっと大切にしてあげるんだ」
「一緒に遊んであげるんだ」
花ちゃんが産まれる前、マー君は毎日毎日こういっていました。
ところが花ちゃんが産まれてからというものマー君はお母さんやお父さんをとられたような気持ちになりました。
いつもいつも辛かったのです。
「お兄ちゃんでしょ?我慢しなさい」
叱られるのはマー君ばかり。
とても寂しくなってしまったのです。
そして花ちゃんがいなければ!と思うようになってしまったのです。
あんなに楽しみにしていたのに。

そして黙っていたクマのぬいぐるみさんが話し出しました。
「マー君、僕の話を聞けるかい?」
優しくクマのぬいぐるみは話し始めました。
「僕は君の友達だったよね。いつも一緒にいたね。僕を壊した時、君は泣いていたよね」
「どうして泣いていたの?」

マー君は話し始めました。
「僕はとても悔しかったんだ」
「僕の友達だった君を妹にとられて。嫌だって言ったんだ。だけどお母さんがお兄ちゃんでしょって。。。」
「とられるぐらいなら壊してしてしまおうって」
「僕だけのものにしておこうって」

クマのぬいぐるみは言いました。
「それがとても悪いことだとは気づかなかったのかい?」
「花ちゃんは何も悪いことしていないよね。それが悪いことだってわかるかい?」

マー君は自分が辛い目にあってやっとそのことに気づきました。
「うん、僕はとても悪いことをしました。だからとても反省しています」

そう言った途端、不思議なことにマー君の耳が元通りに戻りました。

次はウサギさんが話しました。
「ねえ、知ってる?花ちゃんはいつもお兄ちゃんにいじめられていたけど、お兄ちゃんのこと大好きだって泣きながら言っていたわ」

マー君はそのことを聞いて泣き出しました。
「花ちゃんごめん。もう意地悪しないよ」
心からマー君は反省しました。
するとマー君の目が元に戻りました。

「これをよく見なさい」とライオンが言いました。
ライオンが見ている方向に「お父さんとお母さんが泣いている姿が映りました」
その姿をみたマー君は心の底から謝りました。
「お父さん、お母さんごめんなさい。僕もう悪いことはしません」
その途端、マー君の口は元に戻りました。

「どんなに偉いと思っても、君一人では何もできないことがわかったかい?」
お猿さんのぬいぐるみは言いました。
「僕はとても馬鹿なことをしていたとわかりました」
「僕一人では何も出来なくて逃げることもできませんでした」

「よくわかったね」お猿さんは言いました。
するとマー君の鼻が元に戻りました。

目の前にはもう怪物はいません。
元の姿に戻ったぬいぐるみ達は声を合わせていいました。
「さあ、帰りなさいそしてやるべきことをやりなさい」

気がつくとそこはマー君の部屋のベットの中でした。
そしてその日からマー君が灰色になることはなかったようです。

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