お母さんとお父さんは人間の仕掛けたトラバサミに捕まり、タヌキさんはひとりぼっちでした。
人間は怖い。人間は怖い。そう思い込んでいるタヌキさんはいつも人がくると隠れて震えていました。
あるとき、とても可愛らしい男の子が森で迷子になっていました。
わんわん泣いている男の子を見てかわいそうになったタヌキさんは、
勇気を振り絞って森を抜けるように男の子を案内してあげました。
それからというもの、男の子はタヌキさんに会いにくるようになったのです。
しかし、とても恥ずかしがり屋のタヌキさんは男の子となかなか遊ぶことができませんでした。
でも、いつもにっこり笑って声をかけてくれる男の子のことが好きでした。
そして、いつもしょんぼりして帰っていく男の子を見て泣いていました。
あるとき、こっそりとタヌキさんは男の子の後をつけていきました。
こそこそ、こそこそ。
男の子の後をつけていきました。
もっと男の子のことを知りたかったからです。
しばらく行くと道路に出ました。
見通しの悪い道路。
男の子はよく周りを見ていませんでした。
男の子に迫る自動車。
タヌキさんは飛び出していました。
そして男の子に体当たりをしたのです。
目を覚ましたら、男の子はもういませんでした。
それどころか見たこともない森にいました。
森の中に一人ぽっち。
それはタヌキさんが、とてもとても小さな頃のお話です。
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