ネコさんをまとめました

ネコさんをまとめました。

第1章 ネコさんの想い出
なっちゃんは小学一年生です。
なっちゃんはとても泣き虫で引っ込み思案。
友だちを作るのが苦手です。
いつも一人で遊んでいました。
そんななっちゃんのお家に、とても小さな宝物がやってきました。
ふわふわな毛にくるまれた小さな小さな宝物がやってきました。
目も十分にひらいていません。
カゴの中で寒そうに震えています。
きょうからなっちゃんがお母さんです。
寒くないように毛布にくるんだり、抱っこしてミルクをあげたり。
なっちゃんに一番の友達ができました。
二人はいつでも一緒。
なっちゃんの行くところには必ずネコさんは一緒でした。
ずーっとずーっと長い間、それは続きました。
なっちゃんが小学校に行っている時も、邪魔にならない所でなっちゃんを見守っていました。
毎日、毎日、ネコさんはなっちゃんと一緒です。

なっちゃんは中学生になって、友達もたくさんできるようになりました。
なっちゃんは友達と遊ぶようになり、ネコさんと遊ぶことが少なくなってしまいました。
でもネコさんは平気。
以前と同じように、毎日、毎日見つからないように学校についていってなっちゃんを見守っていました。
ネコさんはなっちゃんが楽しそうな顔をしているのが大好きでした。
だから遊んでもらえなくても、ぜんぜん平気だったのです。
なっちゃんも高校生になり、恋をするようになりました。
好きな子に告白して、失恋して泣いているときもネコさんはそばでじっと見守っていました。
大学生になり、社会人になり、結婚してたくさんの家族ができたときもネコさんはいつも一緒でした。
なっちゃんの娘さんをお嫁さんに送り出したときも、ネコさんは一緒でした。
お孫さんができて喜んでいるときも、ネコさんはいつも一緒でした。
いま、なっちゃんは多くの家族に見守られて、病院のベットにいます。
人生の締めくくりを迎え、多くの家族に見守られて、なっちゃんは旅立っていきました。
そんな時もネコさんは病院の窓の外からなっちゃんを見守っていました。
なっちゃんは窓の外で心配そうに見つめているネコさんを見つけました。
ネコさんと見つめあうと微笑みかけて幸せそうに静かに旅立っていきました。
ついにネコさんは独りぼっちになりました。
その日はちょうど雪の降るクリスマスの日。
病院の庭で横たわっている大きな年老いたネコさんの身体に雪が降り積もりました。

第2章 温かな泉
ここはとても古い深い森、心迷いの森と呼ばれる森の中。
この森にも今年はたくさんの雪が降り積もりました。
木々は白い帽子をかぶり、草原はまるで白い絨毯を敷いたように見えました。
そんな真っ白な森の中でただ一カ所だけ雪の降り積もっていない場所がありました。
心迷いの森の奥の奥、今ではみんな忘れてしまっているようなそんな奥に温かい水がわいている泉がありました。
人間の世界での温泉よりもちょっとぬるい泉ですがこの周りだけはどんなに雪が降っても、降り積もったことがないそうです。
その森の中を初老の紳士が歩いています。
大きな顔に小さな目と鼻、ちょこんとついた耳はアクセサリーに見えるぐらい。
それに比べて大きな口!すべてを食べ尽くしてしまいそうな大きな口をしています。
鼻の上にちょこんと小さなメガネをかけたカバのおじさんが大好きな泉に入りにきていたのです。

冬は冬眠するのが普通なのですが、皆さんも知っているとおりカバさんの住んでいるところには冬がありません。
冬眠するということがないのですね。
だからカバさんは冬の間は毎日、泉でくつろぐのが日課になっていました。
そんなカバさんは泉の側に小さな小さなネコさんが横たわっているのを見つけました。
「おやおや、今日はもう家に帰る時間らしいよ」
カバさんは冷え切った身体をしたネコさんを持ってきたバスタオルに包んでお家に連れて帰りました。

第3章 夢
「なっちゃん、なっちゃん」
ネコさんは何度も呼びかけました。
でも、もうなっちゃんは返事をしてくれません。笑ってもくれません。
ネコさんはガラスを何度も何度もひっかきました。
だけど誰も気づいてくれませんでした。
今日はとても冷えて雪が降り始めています。
何度も何度も呼びかけて、何度も何度もガラスをひっかくけれど病室にはいることはできませんでした。
いつしか夜になり、病室は真っ暗になりました。
窓ガラスはカーテンが閉められもう中を見ることができません。
誰もネコさんに気づいてあげることができませんでした。
それでもネコさんは必死で呼び続けました。
「なっちゃん、なっちゃん」
ガラスをひっかき振り絞る声をあげました。
でも、声は届かなかったのです。
ネコさんはとても疲れてしまったのでしょうね。そのまま気を失って、窓から庭に落ちてしまいました。
そのネコさんの身体にしんしんと雪が降り積もっています。
雪は身体から体温を奪います。
そんな中、ネコさんはとても幸せな夢を見ていました。

「なっちゃんと遊んだこと」
「泣いているなっちゃんの横に座って手をなめてあげたこと」
「いい子いい子してもらったこと」
「なっちゃんにミルクをもらったときのこと」

いろいろなことを思い出していたのです。
そうするうちに身体はとてもポカポカしてきて、何だかふわふわと浮かんでいるような不思議な気持ちになってきて眠ってしまいました。
まるでなっちゃんに抱かれているような心地よさを思い出していたのです。

第4章 カバさんのお家
気がつくととても心地の良いベッドの中で小さな小さなネコさんは眠っていました。
とてもとても大きなベッドでネコさんなら20人は眠ることができるぐらいの大きさです。
部屋の中はとても暗いのですが、暖炉のあるあたりがパチパチと音を立てて炎が燃えていたのでぼーっとですが部屋の中を眺めることができました。
壁は木造でログハウスのように丸太を組み合わせた素敵な作りになっています。
柱には時計がかかっていて今が7時(朝か夜かはわかりませんが)をさしていました。
「ここはどこ?」
そう思って見回していると
カチャっとドアが開いて小さな女の子がこちらを覗いています。
「おじいちゃん、おじいちゃん、目が覚めたみたいですよ」
つぶらな瞳をした小さな女の子が可愛らしいフリフリの服をきています。とても育ちがいいのでしょうね。言葉がとても丁寧です。
その女の子がどうやら彼女のおじいちゃんを呼んでいます。
すると大きなとても大きな影が部屋に入ってきました。

「ああ目が覚めたね、もう大丈夫ですか?」

泉でネコさんを助けてくれたカバさんが優しい顔で小さな小さなネコさんに声をかけました。

第5章 泣き虫ネコさん
ネコさんはホッとすると辛い気持ちを思い出してしまいました。
カバさんはネコさんと話をしています。

「とてもつらい思いをしたんだね?ところでネコさんは、なにが辛いか教えてくれますか?」

ネコさんは考えました。
なぜ辛いんだろ?
なっちゃんにナデナデしてもらえなくなったから?
もう、話しかけてもらえないから?
もちろん、それもあります。
でも、本当にそうなのかな?
もう、話しかけてくれないないのかなあ?ナデナデしてもらえないのかな?
いままでもずっと話しかけてもらっていたわけではありません。
ナデナデもそう。
いつもというわけではありません。

遠くに旅立つということはどういうことなのか、誰が理解できるというのでしょう。

「誰も辛い気持を代わってあげることはできないよ。でも、なにが辛いかを一緒に考えてあげることはできるかもしれないね」

カバさんはネコさんに、今までの楽しかったこと辛かったことすべて話してもらいました。
何日も何日もネコさんの話しがつきるまで根気よく話を聞き続けました。

カバさんは自分の考えを押しつけるようなことはしません。
世の中にはたくさんの考え方があって自分が正しいとか間違っているとか争っていますね。
長く生きているカバさんにはそんなことはどうでもいいのです。
カバさんはみんな、それぞれがそれぞれの立場で正しいということを知っているからです。

だから、ネコさんに対しても自分で考え自分で答えを見つけるのをじっと待っているだけでした。

ネコさんはなっちゃんとあえていままでどんなに幸せだったのか楽しかったのか、ずーっとずーっと話し続けました。
何日も何日も。
心の中にあるものすべてを吐き出すまで話し続けました。

ネコさんはなっちゃんの笑顔を見るのが大好きでした。
なっちゃんが幸せそうにしているのが大好きでした。

ネコさんはなっちゃんが遠くに旅立つ前に、とても素敵な忘れられないプレゼントを残してくれたことを思いだしました。
それは微笑みと幸せそうに旅立ったなっちゃんの姿でした。

目をつむれば、今までかけてくれたたくさんの言葉を思い出すことができます。
ネコさんは過去の思い出から、たくさんの幸せをもらいました。

「心迷いの森へようこそ。今日から君は僕らの仲間であり家族になりました」
カバさんはそう言うとネコさんをこの森の仲間に迎えたのです。

ネコさんはもう独りぽっちではありません。

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